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果糖および成人発症型糖尿病の予防
成人型糖尿病は、アジア、アメリカおよびヨーロッパで健康問題として急速に重要性を増している。成人型糖尿病予防においては、健康食および身体運動性が重要な役割を果たす。忘れてならないことは、成人発症型糖尿病ではただ単に血中グルコースレベルが上昇していて、悪影響を全く伴わないということではないということである。この上昇には、例えば、神経障害、腎臓障害、網膜障害などの重篤な合併症が併発し、最も重要なことは、アテローム性動脈硬化症(例えば、虚血性心疾患)のリスクが明らかに増大するということである。事実、糖尿病は死に到る血管疾患である。糖尿病(成人発症型)の際にはインスリンの分泌は必要量よりも少なく、そのために血中グルコース濃度の上昇がもたらされる。しかし、成人型糖尿病においてもインスリン分泌は完全に枯渇しているわけではなく、分泌が低減しているだけである。従って、成人発症型糖尿病患者のほとんどは、インスリン必要量が高くなければ糖尿の症状を呈することはない。インスリン分泌必要量は、果糖のようなグリセミックインデックスが小さい食品を摂取することによって低減することが可能である。 このように、果糖を含有する食事は糖尿病(成人発症型)の予防にある程度有用である。 血清中のグルコース濃度は、グルコース代謝の最良のマーカーではない。グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)は、持続するグルコース代謝(長期のグルコースレベル)の最良で、かつ、最も繁用されるマーカーである。本マーカーを使用して二つの研究が別個に行なわれ、それぞれで、1日量45ないし65 gの果糖の長期摂取介入期間中(4週および12週)にHbA1cはII型糖尿病患者では低下したが、対照群では低下しなかったと報告されている(Oseiら、1987年およびKoivistoら、1993年)。これらの研究により、果糖含有食事は長期グルコース代謝を改善することが実証された。以上から結論されることは、果糖含有食事は、血清グルコースが高い患者でインスリン需要を低下させ、成人発症型糖尿病の予防に有用であるものと考えられるということである。
果糖と血清脂質
過去35年の間に、果糖摂取の血漿脂質に及ぼす影響についての研究が行なわれている。動物実験も行われ、その結果によると、果糖は脂質生成を促進し、果糖は脂質代謝に変化を与えることが示唆された。果糖および血漿脂質に関する人を対象とした研究の結果が、1966年から2000年にかけて数報公表されている。これらの研究の結果には若干の混乱がある。すなわち、試験プロトコールがそれぞれ異なっており、また、試験の被験者にも差があった(健常者もしくは糖尿病患者)ために様々な結果が得られている。その他にも、これらの研究の間では、1日当りの果糖の消費量も大きく異なっていた。同様にして、介入期間にも数日から100日と大きな差があった。同様に、介入期間中に使用されたプラセボも一定していなかった。 このように、各研究間には大きな相違があったために、各研究間の比較は困難である。しかし、以下に述べるように、これらの研究からある程度の結論を求めることは可能であった。
健常被験者を用いた研究
果糖の血漿脂質に及ぼす影響を検討した研究グループの一部(例えば、Crapoら、1984年およびBossettiら、1984年)は、血漿脂質にはなんら変化は見られなかったと報告している。これらの研究の間では、食事に占める果糖のエネルギー含量(E%)には大きな差があった。試料採取は数時点にわたって行なわれているが、これらの研究によっては、血清トリグリセリドおよび血清コレステロール濃度には影響が見られなかったと報告されている。しかし、一部の研究(Reiserら、198年、Bantleら、2000年)では、空腹時血清トリグリセリドもしくは血清コレステロールのいずれかに増加が見られたと報告されている。以上のように、健常被験者を用いた研究から結論されることは、ある研究では果糖摂取後に血清脂質は軽度に増加したが、その変化は正常範囲内であり、従って、明らかに臨床的に意味があるものとは考えられなかった。同様に、幾つかの研究は十分な管理下で実施されているが、果糖摂取後の脂質の増加を実証するには到らなかった。
糖尿病患者を用いた研究
幾つかの研究では、果糖の血漿脂質に及ぼす影響が糖尿病患者を対象として検討された。これらの患者は、インスリン分泌が変化しているためにグルコースおよび脂質代謝に変化が見られた患者であった。従って、これらの糖尿病患者が異なる種類の糖類を摂っていれば何らかの異なる結果が得られるであろうということが明らかに考えられた。十分な管理下で実施された一つの試験では、14名の非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)患者が対象とされ、最初の8週間は対照期間、その後の23週間は果糖介入(12E%)期間、引続く16週間は再度対照期間の合計47週間にわたって検討された(Andersonら、1989年)。合計で12回の静脈血の採取が行なわれた。この試験では、空腹時血清脂質(トリグリセリドおよびコレステロール)には変化は見られなかった。これらの結果(果糖摂取後にも血清脂質は変化しない)は、他の試験によっても同様に確認された(Thorburnら、1989年、Malerbiら、1996年)。すなわち、これらのいずれの試験期の間で比較しても、脂質のいずれの種類をとっても値に変化は認められていない。しかし、果糖摂取後に血清脂質に増加が見られたとする試験も報告されている(Reiserら、1989年、Hallfrischら、1983年)。 糖尿病患者を対象とする試験を比較して結果に差が見られるとすれば、その差をもたらす主な原因は被験者自体にある。糖尿病患者での脂質代謝は健常被験者での脂質代謝とは異なることが良く知られている。同様に、糖類介入後に見られる脂質代謝の変化にはグルコース代謝のバランスが大きく影響することも良く知られている。従って、異なる試験の間および試験期の間で比較を行なうことは困難であり、むしろ不可能といっても良いと思われる。
交絡因子
上に述べた試験の結果の間に見られた不一致は、幾つかの要因によってもたらされたものと考えられる。前にも述べたように、被験者自身(健常人か糖尿病患者か、バランス良好な糖尿病患者かコントロールされていない糖尿病患者か)が差を生む大きな原因である。また、一部の論文に見られるように、被験者の性別も結果に影響を与えるものと考えられる。上に引用した論文で使用されている試験デザインは、通常は条件設定が単純であり、幾つかの交絡因子を含んでいる。試験の期間は極めて重要である。日常摂取する食事内容を変化させれば、どのような変更であっても脂質代謝に変化を与えることができるものであるが、問題は、この変化が急性に短期に発現するのか、持続性に発現するのかということである。通常は、食事変化による介入は数週間持続されるのみで、介入終了後にどのような変化が起こるかは不明である。この際に記憶しておくべきことは、永続する長期の変化のみが我々の心・血管系疾患発症のリスクに影響を与えうるということであり、短期介入試験の結果をもって、心・血管系疾患発症リスクの変化に関して結論的なことを述べてはならないということである。結果を解釈する際に極めて重要な観点は、試験に使用された果糖および対照としての糖の量ならびに試験に供された形態である。対照食事は真の対照と見做せるかといった問題や、成分組成を正確に把握することなく「正常」食として扱っていないかといった問題もある。多くの脂質に関する測定値(例えば血清トリグリセリド)は変動が大きいので、初期値は数時点で採血を行って求めるべきものである。明確なウォシュアウト期間を設定する二重盲検クロスオーバーデザインは、全ての試験期で同一の被験者を使用するので信頼性が最も高い試験デザインであるが、残念なことに、ほとんどの試験でこのデザインは応用されていない。二重盲検クロスオーバーデザインが使用されていない試験では少なくとも、季節という要因によって結果に差が生じることがある。血清脂質は、通常は、冬および春には高値を示し、夏および秋には低値を示す。 果糖介入後に血清脂質値の上昇が見られたとする試験のほとんどでは、測定された上昇は僅かで、上昇後の値は、なお、正常値の範囲内にあった。従って、この上昇が臨床的に意味があるかどうかは疑問である。また、上昇後の値は正常値の範囲内であるので、心・血管系疾患発症リスクを変化させるかどうかについては全く結論が得られない。
現時点での果糖および脂質との関係についてのコンセンサス
得られている知見をどのように解釈して見ても、果糖介入後に血中脂質に変化があるとの結論は得られない。同様にして、アメリカ心臓協会American Heart Association、米国農務保健省US Department of Agriculture and Health、または、他の公の機関のいずれからも勧告は全くなされていない。一方で、果糖はグリセミックインデックスが小さい(血中グルコースおよびインスリンの低値)ことが広く文献的に報告されており、グリセミックインデックスが小さいとグルコース代謝、ひいては心・血管系疾患発症リスクにも好影響を与えることが知られている。以上のように、果糖が血中脂質に影響を及ぼすかどうかについては疑問があるところであるが、それに較べて、果糖がグルコース代謝および心・血管系疾患発症リスクに有用な作用を呈するということは遥かに良く知られたことである。一部の研究者(例えばBantleら、2000年)が得た結論は、最新の科学的データによっては裏付けられなかった。
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